生徒だけど寮母やります!2
しかし、爽馬が思っていた以上にハナは強かった
強いという表現が正しいかはよく分からないが、とにかく彼女は屈強な人間だった
見くびっていたのだ
密会の翌日、朝食後
「昨日の密会の話、どう思いましたか」
部屋に帰ろうとしていたハナに爽馬がそう尋ねると、彼女は笑顔で答えた
「私は、任せてもらったからにはやり遂げてみたい」
この女、何言ってるんだ.....
思わず表情を変えずに彼女をジッと見る爽馬
ハナは微笑んでため息をつくと
「まぁ怖くはあるけれど、自分に出来る限りの事やってみるわ」
と言う
出来る.....限りの事.....?
この人に出来ることに限りも何もあるのか
「何をやるっていうんですか」
淡々と質問する爽馬に、ハナは顔を強張らせた
「そっか.....まだ計画の詳細出てないから知らないわよね。あなたのお父さんから指名されて私、飼い犬として伊吹家に送り込まれるの」
「.....は?」
やはりこの人の言うことはすぐには理解できない
爽馬は数秒考えて、父親の頭が溶けて壊れていることを再認識し、またハナが相当トロい女である事も再度思い知った
変化をしてフラフラになっていた、1年前の景を思い出す
同じ親から産まれた景と同じ出来損ない狼女のこの人だって、短時間の変化で膨大な体力を消耗するはずだ
簡単に言ってみせるけれど
この人本気で言ってるのか.....?
「よくそんなこと引き受けますね」
軽蔑を混ぜた爽馬の言葉に、ハナは視線を落とす
「そうね.....知らない人の家で犬になって飼われるなんて、相当辛いと思うよ。だってヒマだものね!」
自分の身体のことには触れず、そう明るく笑い飛ばすハナに、爽馬は苛立ちを覚えた