生徒だけど寮母やります!2
「.....ハナさん」
爽馬は小さい声で呟く
「.....ん.....?なあに?」
どこか雰囲気がいつもと違う爽馬に、ハナは不思議そうな顔をする
爽馬は強く目を閉じて
大切な笑顔を思い浮かべていた
景.....
生きる意味も楽しさも
人と関わり相手を知る事も
全てを知らなかった自分に、初めて暖かい心を分け与えてくれた
他の人とは違って、周りを突き放す態度を取り続けていた自分を怖がったりせず、みんなと同じように扱ってくれた
くだらない会話なんて初めてだった
誰かの笑顔にこんなに励まされたことも
柔らかいその頬に触れて、思い切り抱きしめたいと思ったことも
優しく、そして強く抱きしめて欲しいと思った事も
そんな、嬉しくて、胸が痛くて苦しい感情が生まれたことなど
今の今まで一度も無かったから
彼女のためにどんなお礼ができるかなんて全く思いつかなくて
こんな自分に何が残っているかなんて何もわからなくて
それで
自分は今、こんなことをしている
どうなるかなんて、どうしたらいいかなんて全く分からない
けれど
自分に出来ることの全てをもって、彼女へ捧げよう
教えてもらった感情の
一つを使って
「.....ハナさん..........好きです。大好きです」
爽馬は顔を上げて、ハナの手を取った
誰も見ていないのをいい事に
ハナの方頬に手を添えて
反対側の頬に唇を軽く触れされる
景.....
景.....
「ずっと、ずっと好きだった
一緒に、ここから逃げ出そう」
恋をした少年の声に、ハナはしばらく何も言えずに立ったままだった