生徒だけど寮母やります!2
しかしその後は、とくにいつもと変わらなかった
相変わらずアカギがよく喋り、ハナが楽しそうに相槌を打つ
そして通りかかった女子役員たちのヒソヒソ声がアカギの耳に届いては、爽馬は腕を小突かれたりしていた
「ヤバい!爽馬君だ。相変わらず超美しい」
「朝から会えるとかラッキー!」
「てかハナさんズルくない?」
この状況にアカギはため息を吐き、なんとも言えないような表情で爽馬を見る
「.....こっち見てないで早く食べて下さいよ」
そんな彼に爽馬がパンを食べながらそう言うと、アカギは一瞬イラっとした表情を見せた
「このまえ美女たちから声かけられて、何かと思ったらお前紹介してくれっつーから、それ頼むなら俺と友達になる過程を経てから言えって怒ったんだよ」
「へぇ」
「ファンにはちゃんと教育してくれんけお前」
「んー.....いや無理」
鼻息を荒くするアカギに、爽馬は適当に返事をしておく
女子の目か、それとも爽馬が気になるのか
居心地悪そうにパンをひたすら食べ続けるハナが目に入った
「あーいっそお前が誰か選んで彼女でも作ってくれりゃあ、こーも騒がれないんだけどー?誰でもイケるよ。選び放題じゃん。いないのいい子?」
「.....え..........」
彼女.....
パッとしない爽馬に、アカギは人差し指を向ける
「お前の姉ちゃんですら一途な恋をした事があんだよ。だからな、小高DNAはそこまで残念じゃないはずだ」
「アカギくん、エマちゃんに殺されても知らないよ」
ハナが柔らかくアカギをたしなめた時
爽馬の頭に浮かんでいたのは、景だけだった
誰でもイケるわけない
選び放題なわけない
やはり最近知ったこの感情を、いつまでたっても手放せないでいる
「違う。僕の恋、全然叶う気がしない。..........今は」
爽馬はちらりとハナとアカギを見てそう言うと、空になった食器を持って席を立った