生徒だけど寮母やります!2


「結斗たそー」


「.....いっちー、その気持ち悪い呼び方何?」


立ち止まった結斗は男の俺から見ても相変わらずカッコよくて、涼しい顔をしてこちらを見ている


どうせコイツは凄いやつだし、とても勝てるような人じゃなくて.....別に勝ちたくもないけど


だからたまには王子の、悪い意味でドキッとした顔を拝んでやろうと


そんな気持ちだった


「さっき窓から景を抱き締めてたの見えたんだけど.....ちょっと無防備なんじゃん?

外であんなことして、結斗のファンが見てたら、悪く言われるのは景だからな。外で軽々しくいつもみたいにしない方がいいと思うけど?」


俺は別に、抱きしめたことを咎めているんじゃなくて


誰かに見られる可能性を考慮せず、少し考えが足りていなかったことをオブラートに包んで伝えてみただけだった


なのに


顔色ひとつ変えない結斗から返ってきたのは、俺の予想をはるかに超えた返事だった


「いつもみたいに抱き締めたんじゃないよ.....?あの時つい我慢できなくなって、気がついたら景ちゃんを抱き締めて、自分の気持ちを言ってた」


「.....は.....え、何の気持ち?」


「だから自分の気持ち。好きだって。いつか振り向かせるから、返事はしないでって言ったんだよ」


.....ま

「.....じかよ.....」


この時の結斗の顔は、後悔の色なんか全くなくて

寧ろせいせいしているかのようにも見えて


俺は息を少しずつ吐くように小さく笑った


「なんだよそれ.....お前超男じゃん」


「男だからね」


素直にサラリと言ってくるあたり潔いし

なんかガチ


次いで結斗は「逆に聞くけど.....」と前置きして俺を見た


「いっちーは焦ってないの?」

「焦ってないって?」


本当は何のことかわかるくせに、耳をふさぐかのように質問に質問で返す自分がゴミほど情けない


結斗はそれさえ見越しているのかいないのか、ケロリとした顔で肩を僅かにすくめた

「景ちゃんのこと」

「..........」

「俺は正直言ってちょっと焦ってるんだ。俺らしくないでしょ?かっこ悪いね」

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