生徒だけど寮母やります!2
「結斗!」
彼はすぐに景の声に気が付きこちらを向く
一瞬驚いたような顔をしたように見えたのは気のせいだろうか
実は昨日のあれ以来、何事もなかったかのように接していたものの、一度も景から話しかけていなかったのだ
「景ちゃん?」
彼の前まで来た景は、ゼロコンマ数秒彼の瞳を見つめてから口を開いた
「咲夜から連絡があったんだけど、個人情報は生徒には教えられないって言われて聞き出せなかったみたい」
「.....そっか.....ワンチャンあるかもって思ってたんだけど、しょうがないね」
「うん.....」
景は結斗と頷き合ってから
「そ、それでね」
と食いつくように続ける
「結斗くん!」
それと同時にクラスの女子が結斗に声をかけ、景は口を閉じてそちらを見た
「あ.....笠上さん.....お話中ごめんね結斗君、一緒に当日のスケジュール打ち合わせしたいからこっち来て欲しいんだけど」
「え、今?」
このような展開は良くあることだ
教室でライや結斗と話していると、クラスの女子、時には別のクラスや学年の人にまで彼らは呼び出され
まるで自分が邪魔者のような視線を送られることが多々ある
そんな時、自分はいつも一歩下がって彼らに行くよう目で促すのだが
この時は、譲るわけにもいかなかった
どうしよう、と顔を曇らせ、引き留めようかと手を僅かに動かす
結斗はいつもと反応の違う景に気が付いたのか、景の手首を掴むと
「ごめんね、橋本さん。また後で行くから」
と微笑んで、そのまま景を連れて教室を出た