生徒だけど寮母やります!2
景の言葉を聞いて、鈴菜はそうではないのだと首を振っていた
___『うちはそもそも嫌がらせとか、そんなちっさな事は気にせーへんよ。別に意図的に火野ライの事を避けようとしてるわけでもないって』
『そ.....そう?』
『そっ、それにもう、うちの役目は終わったからさっ』
『鈴菜ちゃんの.....役目.....?』
あの時詳しく追求しなかったが、そういうことだったのか
「それは違う、九雷」
ライは鈴菜をまっすぐ見て首を振ると、滅多に他人に向けることのないわずかな微笑を浮かべた
「お前が俺を騙してくれなかったら、親父の頼みを聞かず全て話すと言ったら、きっと俺は入学できなかった。ここでお前らと会うこともなかった」
「火野.....」
「ありがとう、九雷」
予想外の礼を言われ、鈴菜は口を震わせる
浅く呼吸をすると
「本当は違う.....」
とか細い声を絞り出した
「本当は!あんたが悪いわけやない事分かってたけど.....入学前は、九雷の事を無いものみたく捨てて火野として生きてるあんたが憎くて.....ウチ全部知ってるんやからなって、知っててもお前なんかに教えるかってずっとそう思ってた」
景たちは本心を吐露していく鈴菜を、真剣な眼差しで見る
きっと彼女は、苦しむ九雷光の姿も見て来たのだ
だから優しい彼女は余計に、そう思ったのだ
「でも、なんや知らんけどあんたと友達みたいになっちゃいそうで.....ずっと後ろめたかった.....」
「友達だよ」
突然、柊の可愛らしい声が聞こえて全員は彼女を見る
視線を集め恥ずかしそうな顔の柊は、鈴菜の背中に手を当てると
「火野君も伊吹君も、クラスは違うけど布川君や市河君.....小高君も、みんな私たちに優しくしてくれて、景ちゃんを通じて仲良くなれたよ」
そう微笑んだ
「友達は悪いことしてヒビが入っても、謝ったら仲直り出来るから。2人とも謝ったから、だからもう大丈夫だよ、鈴菜ちゃん」
.....柊............
景は思わず駆け出して柊に抱きつくと
「いいこと言った!」
わしゃわしゃと彼女の頭を撫でる
後ろから「その通りだね、柊ちゃん」と、優しい結斗の声が聞こえた
「聖母か!」
「聖母だ」
「ローレライだよー」
市河と咲夜の褒め言葉にくすぐったそうに笑う柊を、鈴菜は強く抱きしめる
そしてライに向き直ると
「ありがとう。仲直りやな、火野ライ」
いつもの彼女らしい芯の通った声でそう言った
ライも、満足そうな微笑を浮かべて
「あぁ」
と頷いた