生徒だけど寮母やります!2
「ありがとう景ちゃん。でもそうじゃなくて.....ちゃんと、聞こうとしたんだけどね」
「.....え、そうなの?」
「うん」
景は驚いて、彼の広い背を撫でていた手を止める
そしてしばらく次の言葉を待つと、結斗は口を開いた
「月沼に開口一番言われたんだよ。
『そういえばさっき親から電話が掛かってきたんだけど、伊吹に伝言があるみたい。
‘‘花が脆いからキンギョソウは良くないんですよ。ラベンダーをオススメしますよ’’
って。ガーデニングの話かな?多分、お母さんに伝えてねってことだと思う。母さんのケータイが壊れてて伊吹の母さんと連絡取れないんだって。』
って」
景は‘‘月沼の親からの伝言’’という内容に顔色をなくす
.....え.....?
月沼君の親って.....それこそお姉ちゃん(美音)を結斗の家に送った張本人でしょ?
一瞬そう考えてから全身が急激にスッと冷え、ゾクリと震える
そして、結斗のブレザーを強く握った
「結斗、花が脆いって言われたの.....?」
「.....うん」
花が____
ハナが____
______脆い
恐ろしかった
その次を考えるのが恐ろしかった
震える声を絞り出し尋ねる
「.....花言葉とか、調べた?」
「うん。調べてみた。キンギョソウの花言葉の1つが、【でしゃばり】。ラベンダーの花言葉の1つが、【沈黙】、だって」
「ハナが脆いから、でしゃばりは良くないですよ.....沈黙をオススメします.....」
消え入りそうな声で呟きながら愕然とした
どうして結斗がこんなにも怯えているのかをようやく理解する
自分がここに来るまで、彼は1人でそれを抱えていた
美音と接触したのだから、月沼の両親にだって当然バレていたのだ
私たちが、結斗の母親がどうやって小さなシベリアンハスキーを手に入れたのか、尋ねないわけがないのだから
月沼に辿りつく事なんか簡単に推測できる
もしかしたら月沼は全てを知っていて、
けれど敢えて知らないふりをして『伝言』を教えたのかもしれない
もしくは本当に何も知らない可能性もある
けれどそれを知る術は無くなってしまった
「これって、月沼家から牽制されたんだよね.....景ちゃん」
「うん.....ハナを、笠上美音を守りたかったら、月沼君には何も聞くな、そういうことだよね.....」
景は結斗がいつの間にか恐怖を抱いた景の背中をさすっている事に気がつく
私が慰められてどうするんだ
景は珍しく俯き黙ったままの結斗に心を痛める
しかし
かける言葉が見つからなかった