生徒だけど寮母やります!2
「へー!結斗くん、この夏から1年間生徒会長やるん?」
「はい、ありがとうございます!」
「ん?何で君がお礼するの咲夜?」
市河家に上がらせてもらった男子寮B総勢9人は、居間に所狭しと並びながらハルとカヅキに物色される
曰く
伊倉千加、千冬は互いの存在を自分に重ね、相手がいなくては生きていけない禁忌の双子であり
「そんなことありません」
「違うから」
曰く
占い師喜多弥隼は、自分にいずれ訪れる運命を悟ってもなお、それを受け入れる覚悟で自分より相手のことを考えてしまう、お節介関西人
「不吉やな。美化しすぎや」
曰く
飴屋満宵は家庭の事情で性別を偽り男子として生きることを余儀なくされたか弱い女の子
「男ですー」
そして藤樫ルーク
彼は極秘の任務を抱えアメリカから派遣されたFBIの一員で、その任務を知るものは寮母景のみであるとのこと
「haha」
いや、hahaて
結構近いけどな?
景はルークに関しては惜しい線を行くカヅキとハルの妄想に感心する
そして特に注目を浴びたのは、二年生の中で唯一初訪問である咲夜だった
「1人めちゃくちゃ冷静だった白い子が何か元気キャラになってるのかと思っちゃったけど、君去年いなかった子か!あ〜〜イケメンだよイケメン!主人公(ヒーロー)タイプだねぇカヅちゃん」
「これは隠れルーキーやなぁ。ピーンチ日向!」
ジロジロと全身を隅々まで見られるような感覚に、咲夜は汗を垂らす
(た、助けろお前ら!)
心の中で助けを求める咲夜に唯一テレパシーを使えるライが
(この洗礼は市河家の客人が受けるくぐるべき門だ。が ん ば れ ?)
と視線で見下しながらエールを送った
(.....いや響かない!こんな心に響かないエールは初めてだ.....何で来た帰省野郎って聞こえるのは俺だけか!?俺だけか!?)
はぁはぁと息を浅くしながら後ろに手をつき後ずさる咲夜
見ていて可哀想になったのか
「やめろよババア共」
と口悪く市河が嗜める
すると姉のハルは目の下の血管をピキッと動かして
「ハァァア?」
と売られた喧嘩を買い取った
「お姉様はイケメンに囲まれて手も足も出せない弟がどうやったら上手くいくのか一年中考えてあげていたんですよ」
「は!?」
自らめんどくさい展開に誘導してしまった市河の背中を結斗が優しく叩き
そんな様子を哀れそうに一年生が見つめる
そこにお茶を入れた湯飲みが並ぶお盆を持った快が足で襖を開けながら入って来たので、言い返す言葉がなかった市河はハッと顔を上げて兄を見た
「何がお姉様だ。人の心配してそんなこと考えてないで単位の心配しろ」
「メシア兄様!」