生徒だけど寮母やります!2


次の瞬間には

足が勝手に動いていた


景は懸命に、速いとは言えない足を動かして彼の元へと向かう


誰よりも真っ先に走り出した自分を追うように、後ろから足音が聞こえた


近づくと分かる


こちらに背を向けた爽馬が

校舎を見上げていた



消えないで.....


そこから、私たちの中から

動かないで.....



懸命に手を伸ばす


人の気配を察知し彼が振り返ろうとするのとほぼ同時


景は目一杯に伸ばした腕で、その細身の体を抱き締め引き寄せた


「わ.....」

バランスを崩しかけた爽馬が、声を漏らす


「わっ.....」


抱きついた勢いで2人してその場に崩れ、地に手をつく


ハッとして顔を上げると、透き通って消えそうな爽馬の顔が目の前にあった



「え..........景.....?」




名前を


呼んでくれた



何でここにいるのかなんて、そんな些細なことはどうでも良くなるほど



___覚えていてくれたんだね



嬉しい涙が一気に溢れ出して止まらない



「うぅ.....うぅぅぅ.....うぅぅ爽馬だ、爽馬だぁ.....」


相変わらず彼は愕然としたような目で自分を見つめるだけだったけれど


思わず真正面から抱きついて泣いてしまった
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