生徒だけど寮母やります!2
_____窓から逃げよう
算段はある
窓からなら逃げられる
そう決心してからは早く、私は犬姿時につけていた首輪から小型通信機を剥ぎ取ると電源を入れた
「どうしました!?」
若そうな男の声がドアの向こうから娘を心配し、足音がこちらに近づく気配がして
焦りが生じ額には汗が滲んだ
最悪、姿を見られるのは構わないが捕らえられてはおしまいだ
しかも伊吹家の息子、結斗だけではなくさらに多くの彼の友人が来ている
伊吹家の娘1人だけであればどうにでもできただろうが、多勢に無勢では逃げられない
____早く応答してくれ、通信機!
しかし通信機の応答を待つ間、ドアの向こうの玄関で繰り広げられている会話に私は耳を疑った
「えっ.....まさか、また爽馬がいるとか!?」
「.....え.....爽馬?」
_____今なんて
_______爽馬と言ったか!?
よく知った名前が出て来たことに驚きを隠せなかった私は、通信機の応答に一瞬遅れて気がつく
『こちらサポート、何かあったかハナ?』
「え.....だ、誰だ!?」
ちょうど同じタイミングで若い男が娘を守るようにドアから飛び出し、鋭い目つきでこちらを見た
さらに続いて3人
日本人ではない金髪の男や、伊吹家の娘によく似た雰囲気の男
.....なんだ?
こんなにいたのか
人数の割には静かに家に上がって来たじゃないか
「また.....侵入者か!?誰だお前!」
後から来た3人のうちの1人が、さっそく私に近づく機会をうかがっている様子を見せる
私が咄嗟に彼らを睨みつけ
「来るな!!」
そう叫ぶと、娘は困惑した泣きそうな顔を見せた
私は警戒体制を保ち目線を動かさぬまま、通信機を口元に当てる
そして早口でまくしたてた
「.....聞こえる!?.....見つかった。今すぐビルの外にワープを張りなさい.....!」
自分の背後にあるのは大きな窓
勢いよく振り返り、ガチャッ.....と音を立てて思い切り開ける
「おい.....まさか!」
「逃げるな!」
_____捕まるわけにはいかない
彼らがこっちに来て私を捕らえようとしているかどうかは、背中じゃわからない
_____だからすぐに!
私は窓枠を握ると、グッと体を持ち上げて腰を乗せた
左手で握りしめたままの通信機から
『準備完了』
とだけ返事が来る
_____いける
そう思いながら窓枠に躊躇もなく足を掛けて身を乗り出した
そして
ワープに向かって飛び降りるのと同時
「お姉ちゃん........!!!!」
_________え?
そんな懐かしい人の悲痛な叫び声が
窓の外を落下する私の耳を掠めた