生徒だけど寮母やります!2
それから約2ヶ月が経ち
夏が来た
爽馬は前のように私に言い寄っては来なかったし
第2の情報漏洩で倒産間際まで追い込まれた伊吹グループも、不安定ながらしぶとく経営を続けていた
けれど
小高幹部によると、改善の兆しが見られない伊吹グループの倒産は時間の問題とのことで
そう遠くはないらしい
自分のせいで倒産する会社があるというのは変な感じで
その様子を冷静に見届けようとしている自分が恐ろしかったし
自分は変わってしまったのかとたまに考える
変わる前の自分にも
変わった後の自分にも
たしいた興味なんてなくて
じゃあなんで妖術結社に来たんだろうと、ふと思うけれど
マイナスがゼロになることはあっても、プラスになることは滅多にないんだよな
そんなもんだよな.....
「ハナさん」
「ん?」
妖術結社のロビーにて、久しぶりに爽馬に話しかけられて私は首をかしげる
この時期アカギなんかは実家に帰省していて結社内には人がおらず、小高家をはじめとする少数の主要家系の人間のみが働いているだけだった
だからかほかの誰でもなく私に
「夏祭り、行きませんか」
そう声をかけられた時はびっくりして、素で「はぁ!?」なんて言いそうになった
「ど、どうしたのよ。いくら人がいないからって、最近落ち込み気味の私と行かなくても.....」
苦笑いでそう言いながら、けれどもしここで自分が断れば爽馬は誰とも夏祭りに行かないんじゃないかと思う
夏祭り行くこと
それは彼にとって何か意味がある気がして
私は咄嗟に「いつ?」と尋ねてしまった
「.....明日」
「.....明日?」
爽馬はしばらく黙ってから、こくりと頷く
「明日、午後2時にロビーで」
「え?」
そのままなにも言わず踵を返して自分の元を去っていく
.....え!?
「あ、ちょっと!」
戸惑い半分に手を伸ばした私のことも振り返らず、背を向けた彼は階段を上っていってしまった