生徒だけど寮母やります!2
私の寮母生活13
全力でいきます!
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夏の風が頬を切り
景は横に立つ爽馬に身を寄せて、その顔を見上げた
「ね、ねぇ.....爽馬」
およそ10人くらい
学校の周囲を四方八方取り囲むように現れた集団は、もしかして妖術結社の人間だろうか
全員がこちらを睨むような視線を向けている
「爽馬、この人たち誰か知ってる?」
爽馬は結斗の質問には答えなかったが、その表情が状況の悪さを物語っていたからか、誰もそれ以上は追及しなかった
「この後、僕たちどうなってしまうんですかね」
今後の展開が読めず、現実から逃避するかのように表情を固める千冬
「さぁ。魔術科二年で企画してた肝試しよりは怖そうで夏にはいいんじゃん?」
「この状況でその返しをする君も怖いよ」
ライと結斗のやり取りに景は呆れたような視線を向けた後、依然何も言葉を発しない爽馬を心配して見上げた
____あの人たちが、今は爽馬にとって仲間だとしたら
____板挟みだ
助けてと、一緒に逃げようと言いたいけれど
爽馬がこちらの味方に付いてくれるとも限らない
それに、まるで一点に追い詰められた小兎とそれを狙う狼の群れのような構図
こちらが不利であることは明らかだった
「小兎の中の狼.....」
「うわぁ日向に読まれた.....!しかもちょっとバカにされた」
「ごめん.....」
「言いたかったんだね、いっちー」
申し訳なさそうに謝罪する市河は、何かに気が付いてそちらに顔を向ける
「あっ」
みんなもそれに気が付き市河の視線の先を見ると、景たちが学校に入る際に通った校門の近くに、複数人を従え拡声器を片手に持った男が立っていた
その距離およそ100メートルほど
彼は口元に拡声器を当て、話し出す
『ハナ基い、笠上美音がここの夏祭り会場を最後に失踪した』
_____!?
これは爽馬へ向けた言葉か
それともここにいる全員に聞かせたいのか
スピーカーから聞こえるくぐもった声が、景の背筋を冷やした
___今何て?この人たち、妖術結社?
___てことは、やっぱりついさっきまで夏祭りにお姉ちゃんがいた!?
これを聞いて表情を変えたのは景だけではない
爽馬も眉をしかめて拡声器男を睨み返した