生徒だけど寮母やります!2
説教します!
* * *
「よし、景さん」
「わんっ」
「行きますか」
「わんっ」
咲夜は自身のリュックを抱えるように持ち、中を覗いて声をかける
リュックの中から聞こえる可愛らしい子犬の鳴き声に対し「うん」と頷くと、彼は後ろを振り向いて「行こう」と声をかけた
「みんな忘れてたかもしれないけどね、景は少し興奮すると犬になっちゃうことがあるんだ.....」
咲夜が遠い目をしながら説明すると、弥隼は彼の腕の中でモゾモゾと動くリュックを凝視
「そういえばそんな設定やったな」
「設定いうな」
「えっ、景ちゃんミヨちゃんのキスに興奮したの!?」
紫色のもやから聞こえる最後のわざとらしい嘆きは敢えてスルーし、咲夜はまだ明るく青い夏の空を見上げた
「まだ月は出てないけど、今夜は満月だから.....って景が言ってる」
「昼間でもうっすら月って見えるもんね。ごめんね景ちゃん、思わずキスしちゃって」
歩きながらしょぼんと謝る満宵に対して咲夜は顔だけ振り返ると
「どうせ犬姿になってリュックに入って移動しようって話ではあったから、何ら問題ないよ.....って景が」
と微笑んだ
現在、咲夜と景、結斗、満宵、千加、弥隼が向かっているのは市河家
市河家に避難するという旨のメールがライから届き、集合場所は自動的に市河家となった
「ところでその市河家の息子だけ屋上に残してきたんでしょ、霧先輩」
タメ口かつ先輩を霧呼ばわりする千加に一同は苦笑すると、紫色のもやからは「そういえばそうだったね」とわざとらしく明るい返事が返ってくる