生徒だけど寮母やります!2
「御苦労」
「はい」
「そん.....な.....」
満宵は唖然として掠れた声で呟いてから、やっと実感が湧いたかのように両手で口元を覆う
「景.....」
「絶対に助けるよ、咲夜」
「ああ」
先輩2人は何とか景を奪取できないかとタイミングをうかがっているようだが、その顔からは焦りが隠せない
「はな.....して」
対して、景も涙目になりながら、10メートルほど離れた彼らを見た
_____みんなの所に、行きたい
_____私は、爽馬とライが待つ市河神社に....行かなきゃ
突然の出来事で
両親にも、鈴菜にも柊にも、有姫、マナ、水穂先生にも何も言えずに学校からいなくなるわけにはいかない
身体は限界で力が上手く入らないけど、犬姿になって一直線に走れば、きっとみんなが受けとめてくれる
みんなとの間に待ち構えている複数人の男たちさえ上手くかわせれば____
再び変化しようと決心したその時
「黙って聞け」
自分を羽交い締めにしていた男が耳元で囁いた
_______!!!
心臓がドクリと跳ね、思わず声を出しそうになる
____何!?
考える間も無く、男は再び景にだけ聞こえる声で口を開いた
「俺が合図したら、ここから全力で走って逃げろ」
「ぇ.....」
____どういうこと?
____この人は私のことを逃してくれるっていうの?
「.....爽馬のこと、任せた」
「.........!!」
後ろに立つ彼の顔は見えなかったが、声が切なくて優しい
____この人は、爽馬の味方?
考える暇はない
今はこの人を信じるしかないと、景は僅かに頷く
男が、ため息で微かに笑った気がした