生徒だけど寮母やります!2
「笠上美音のことは一番近くで見てきたと思う。あの人のやったことは勝手だったけど、ただ本当に不器用な人だから.....あの人の願い通りの機会をもう一度だけ.....」
言いかけた肩を結斗が抱き、柔らかく揺れた瞳が優しく見つめる
言わなくても分かってるよ、と視線が語っていた
「ごめん、反対するつもりで言ったんじゃないよ。ただ心が痛んでね。2人がそこまで言うなら賛成するから」
「うぁぁあ結斗お前いい奴だな」
やりとりを蚊帳の外で見ていた咲夜がダバーと大滝の涙を流すような唸り声をあげる
「え、なんで咲夜がそんな泣いてるの?」
「だって結斗.....笠上美音は伊吹グループを.....それもまた事実だろ?」
目を潤ませ訴えてくる咲夜に結斗は笑うと
「うん、そうだね。あと君もね.....困った子だ」
と肩を抱いたままの爽馬を見る
言わんとしたことを察して、爽馬は「ごめん」と小さく謝った
その一言には言葉にできないような自責の念が込められていた
結斗はため息とともに笑みを漏らす
「.....辛かったね。お互い辛かったね。みんな苦しかったのが分かるから、爽馬も、景ちゃんのお姉さんのことも責める気にはなれないよ。
でも.....もう一度何も言わずに出てっちゃったら怒るからね、爽馬?」
久々に会った友人の言葉が
優しすぎて胸にしみる
涙が出そうになり鼻がツンとするのを感じながら、爽馬は全員を見渡した
宝物のような時間を一緒に過ごした景、結斗、ライ、咲夜、市河
MAから日本に来てくれたルークと
自分と直接の関わりは無くとも助けてくれた千加、千冬、満宵、弥隼たち一年生
自分たちを守り兄を受け入れてくれた、市河家のシヅキ、カヅキ、ハル、カイ
妖術結社から送り出してくれたアカギ
そして景たちの背中を押してくれた鈴菜、有姫、柊、月沼、マナ、九雷光
その全員へ
感謝の気持ちを込めて
「助けてくれて.....ありがとう」
全員は満足感で満たされたような笑みをこぼす
その言葉で十分だ
爽馬のことを信じて良かった
たくさん悩んで話し合ったけれど
助けると決断できてよかった
そしてまた
「爽馬も.....景と笠上美音のこと、助けてくれてありがとう」
ライは全員を代表するように、彼に感謝の気持ちを返した