生徒だけど寮母やります!2
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帰り際
「ぐすっ、ぐすっ、大変だったけどよく頑張ったな。気を付けて帰れよブラザーズ」
ハルは涙を流す真似をしながら、ごった返す玄関にて弟たちを送り出す
彼女は日向だけではなく、男子寮Bに所属する全員を弟のように思ってくれているらしい
「ありがとうございます、本当にお世話になりました」
「いいえ~、景ちゃんはシスターだね。またおいでな、私一人暮らしだからここ住んでねぇけど」
景はハルに撫でてもらいながら、あはは、ですよね。と笑った
「じゃあ俺らは先に戻るか、爽馬」
ライに肩をポンとたたかれ、爽馬はコクリと頷く
彼に関しては万が一帰り道に襲われると危険かつ全てが水の泡になる可能性があるので、ライとともにテレポートで一足先に寮に帰ることになっていた
「景のこと頼んだ」
「任せてよ」
ライは結斗、続いて咲夜、市河と拳を交わし頷きあう
そして自分より少し背が低くて華奢な爽馬の肩を抱いた
「爽馬くん、困ったことが有ったら助けになれると思うから、気兼ねなく日向に伝えてね」
とシヅキ
「まずはゆっくり休んでな。二人とも」
とカヅキ
去年、爽馬の転校にいち早く気が付き心配して声を掛けていたカイは、爽馬と目が合うと優しく微笑んで頷いてくれた
「ありがとうございます。兄の事、よろしくお願いします」
爽馬はハルの後ろで居場所がなさそうにしていた隆馬をちらりと見てから頭を下げる
ずっと黙っていた隆馬は、最後に躊躇いながらも前へと出てきた
「......爽馬。長いこと妖術結社で働いてたから、お前の学費を出すくらいのことは出来る。変なこと気にしてないで学校戻れよ」
ぶっきらぼうな彼の言葉に、誰もが目を開き息をのんだ
彼だって高校にはろくに通えなかったはずだ
自分たちと同じくらいの年から父親の言うまま妖術結社で働いて、爽馬と同じように感情を持たぬよう育てられてきたのだ
それを後悔してるから、爽馬にそう伝えたのならば
なんて切なくて暖かいんだろう
ハルとカイがニッと笑って彼の肩を抱く
驚いたからか言葉を失っていた爽馬も、柔らかい表情をつくると
「.....分かった、ありがとう」
と礼を言った
キラキラと小さく光が発生し、二人の体を包む
景は胸がぽかぽかするのを感じながら、二人が消えるのを見届けた