生徒だけど寮母やります!2
「何も.....何も知らなかったんだ。月沼トレーディングが伊吹グループ侵入事件の黒幕だったこと。それに君達がだいぶ前から気づいていたこと。なのに......僕には何も言わないで、いつも通り友達でいてくれたことも」
閉じられたままの彼の瞳から、涙が落ち頬を伝う
「.....めん」
震えて声にならない謝罪が、彼の口から弱々しく溢れる
もう一度大きく息を吸って目を開き
「ごめん......!!」
今度は力強く謝ると、彼は左の拳をもう一度結斗に突きつけた
自分の目の前に差し出される拳に目もくれず、結斗は月沼を抱きしめる
「謝らなくていいから.....!」
月沼は目線を動かし自分を強く抱きしめてくれた結斗を横目で見ると
「左手さ.....スルーすんの?」
と泣きながら笑いをこぼした
景は未だドキドキが収まらず、胸をおさえながらライ、市河、咲夜と目を合わせる
______よかったね
_____やっぱり月沼君は何も知らなかったんだね
ライは景と頷き合うと気になるのだろう、月沼から離れない結斗の代わりに突き出された左手に触れ指を解いた
月沼の手の中から出て来たもの
それは
小さな直方体の黒いプラスチックのようなものだった
「何?」
ライの人差し指と親指で摘まれたそれを、景は不安まじりに凝視し首を傾ける
結斗も月沼から離れてライの手元を見ると、月沼は「それ小型ICボイスレコーダーだよ」と涙を拭いながら言った
「ボイスレコーダー?」
真っ先に反応したのは先生だ
妖術結社と手を組んだ月沼トレーディングの息子がボイスレコーダーを差し出してきた
それがどう言うことなのかを理解した全員は、驚きのあまり絶句して月沼に注目する
月沼は、その反応からして全てを知っているらしい有姫と鈴菜と頷き合った
「九雷さんたち、フェアじゃないからって知ってることは全部教えてくれたんだ。僕なんて言っちゃえば“敵側の息子”だから勇気がいたと思う。
僕も最初は話を聞いてもうちの親がそんなことをしたなんて受け止めきれなくて、信じられなくて。そんなはずないって思いたくて。
でも、それが本当ならたとえ親だとしても許せないと思ったから、親に電話して確認するべきだと思ったんだ。
その結果、悪い真実を知ってしまったとしても、目をつぶって知らないふりをしないために電話の内容を録音しようと思って、テレポート使いの友達に頼んでソレ(ボイスレレコーダー)を買ってきて貰ってさ」