生徒だけど寮母やります!2
「では、理事長。小高爽馬君に関しては特例として男子寮Bに部屋を用意してもよろしいですか?」
話し合いの最後
景の母である京子が理事長に尋ねると、理事長は
「いいでしょう」
と頷いて爽馬に視線を向ける
「ありがとうございます」
爽馬からの素直な感謝の言葉に何度か小さく頷いた理事長は、数秒の静寂の後
「大変だったでしょう。君が学校に復帰できるようにこちらも最善を尽くしますから、頑張ろうね」
と笑いかけた
「はい」
わずかに表情を固めて返事をした爽馬の肩を、俺らも付いているから大丈夫と言いたげに結斗と市河が抱く
景はそんな微笑ましい様子を数秒眺めた後、横に立っていたマナを見上げ
「ご迷惑ばかりかけてすみませんでした、斎藤先生。私が謹慎中の間は寮のことお願いします」
と小さく頭を下げた
「いいわよー、ご迷惑被るのはいつものことだもの。あなたこそ生徒のくせにノンストップで働きすぎなんだから休むのにちょうど良い機会だったのよ」
「はは.....ありがとうございます。みんなにそう言われました」
実際のところ「景の働きすぎを防ぐため」というのも謹慎理由の一部である
健康面を考慮してのこともあるが、学生バイトは年収が130万円を超えると納税義務が発生してしまうので、それを防ぐためというのも大きい理由の1つだ
つまり自分は高校生でありながら一年間で130万円近く稼いでいるのだと思うと、素直に褒められるような部分ばかりじゃないと感じる
そんなこんなで
今回の謹慎は自分にとって良い機会なのだと、景は思いのほか気持ちよく納得することができたのだ