生徒だけど寮母やります!2
その日の夜
景は男子寮Bで夕飯を食べながら、今日の出来事を思い出していた
景のフォークを持つ手が止まっていることに気付いた男子寮Bの彼らの視線にも、まるで気付かないようだ
「.....食欲ないのか?」
咲夜にそう言われ、彼女はハッとして前を見ると、こちらを見るいくつもの視線に気付き顔を赤らめる
「まぁあんなことがあったわけだし。俺は見てないけど。そりゃ色々考えるでしょ」
景は市河が自分からみんなの視線を逸らすため、軽く流そうとしてくれたことに気がついた
ありがたいなぁ
「いやぁー、なんかみんなして私のこと探してくれてたって知って、すごい嬉しくて」
そんな景の言葉に、景探索には携わらなかった一年生は少し残念そうな顔をする
「景ちゃん.....ごめんねっ僕何にも知らなくてっ.....」
「ううん、みよちゃんが謝ることじゃないよ.....!ありがとね、心配してくれて」
「寮母さんにそんなことがあったとは全く知らず、驚きましたが.....無事で本当に良かった」
「せやなぁ」
「ありがとう、千冬くん、弥隼くん」
景は出会ったばかりなのに自分を心配してくれる一年生にも心の底から感謝しながら、自分が恵まれた環境にいることをつくづく実感した
あの後鈴菜は自分を抱きしめてくれて
柊は「景ちゃん、景ちゃん」と涙をこらえて微笑んでくれた
そんな感謝の思いにふけっている景だったが、横からお皿にフォークが伸び、ヒョイッとデザートの苺を取られて即座に横を睨む
「ライそれ私の苺」
「礼ならこれでチャラにしてやんよ」
「わっ、本当に食べた!」
いつもと変わらない
そんな小学生レベルのやり取りに、みんなが呆れたように笑う
「景ちゃん、俺の苺あげるよ」
「えっ」
「ほら、口開けて」
「お前らそいつの苺食べとけ」
「おーっ、やっさしいね結斗」
「ちょっとまって咲夜俺は景ちゃんに」
ルークも千加と笑って話しながら彼らの会話を眺めている
よかった.....
ルークくんも、大丈夫みたい
「じゃあ私ライからオレンジ貰うねありがとう」
「バカ!」
「じゃあ俺も」
「俺も」
「先輩、俺も」
「お前らは素直に無いわ」
こうして色々あった登校日初日も終わり
景たちは晴れて二年生となった