真夜中の恋人
「ナツ?」
意識が遠い日の記憶に触れたとき、タカヤがわたしの名前を呼んだ。
「え?」
「何を考えてた?」
「……タカヤのこと」
そう言うと、タカヤは微笑んで上半身裸になった。
程よく鍛えられたタカヤの身体に男の色気を感じて、気持ちが昂っていく。
今から、この逞しい身体に抱かれるのだ。
「今夜は優しく出来ないかもしれない。いい?」
タカヤがしたいと言えば、それに従うしかないのに、それでも毎回タカヤはわたしの了解を得ようとする。
黙って小さく頷くと、タカヤは嬉しそうにニコリと微笑んだ。
タカヤの唇と舌がわたしの身体にそっと触れて。
首筋から鎖骨、それから胸へゆっくりと甘い刺激を与えながら降りていく。
「んっ……」
堪らずに声を漏らすと、タカヤが笑ったような気がした。
彼の愛撫は嫌いじゃない。いつだって、わたしを簡単に快楽の極みに導いてくれるから。
何も考えなくていい。そこに愛が無くても、身体を重ねてキスをして、抱きしめ合うことに意味があるように思えるから。
それなのに……
「タカヤ?」
わたしの問いかけに、顔を上げた彼と目が合った。
やっぱり、何かが違う。お酒に酔っているだけじゃない。
わたしに触れているタカヤが傷ついているような気がした。