真夜中の恋人
2・境界線
行く当てもないまま、スーツケースを引き摺って歩いていた。

これからどうしよう。
溜め息を吐いたところで、気に留める人なんていない。
まるで、異国の地に一人で迷い込んでしまったみたいだ。

心細くて不安で仕方が無い。
お金さえあれば、まだ気も楽なのに。と、また溜め息を吐く。

ふと、消費者金融の看板が目に飛び込んできて、無意識に足が止まった自分にハッとする。

お金を借りたところで、返す当ても無いのだ。
借金ばかりが増えていくのが目に見えている。

これは、本当に困ったときの最終手段だと自分に言い聞かせて、足早にその場を立ち去った。

今日は取り合えず、ネットカフェに泊まることにしよう。

夕食は、スーパーで買った87円の菓子パンが1個。
次の仕事が決まるまで、贅沢は出来ない。

……大丈夫、なんとかなるから。

呪文のように、何度も唱えていた。

大丈夫、大丈夫。きっと、なんとかなるから。

自暴自棄になっちゃだめ。
頑張っていれば、良いことがあるはずだもの。

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