真夜中の恋人

     

「美奈ちゃん?あ、やっぱり美奈ちゃんだ」

だから、雑踏の中で名前を呼ばれたとき、わたしは心の底から助かったと思ってしまった。


「……ミカコちゃん」

わたしの目の前に立っていたのは、もう何年も会っていなかった幼馴染のミカコちゃんだった。

こんなところで、偶然逢うなんて。
わたしは、嬉しさの余り、ミカコちゃんの手を握り締めていた。

断られてもイヤな顔をされても構わない。

「ミカコちゃん、いきなりで図々しいお願いなんだけど……」

簡単に事情を説明して部屋に泊めて欲しいとお願いすると、ミカコちゃんはあっさりと了承してくれた。

それどころか、「家賃を半分払ってくれるなら、同居してもいいよ」とまで言ってくれたのだ。


「本当に、いいの?」

恐る恐る聞き返すと、ミカコちゃんは「そうしてくれた方が、わたしも助かるの」とニッコリ微笑んだ。

「ありがとう。じゃあ、遠慮なく今日からお世話になります」

ペコリと頭を下げるわたしに、大袈裟だよとミカコちゃんはクスクスと笑う。





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