真夜中の恋人
「いこうか」
「あの、わたしは、どうすれば?」
何を着ていいのかわからずに、部屋着のままだった。
タカヤが何か用意しているのだろうと思っていたけれど、予想に反して彼は手ぶらだったのだ。
戸惑うわたしを見て、タカヤはクスリと笑う。
「心配しなくていい」
「でも……」
「いいから、着いてきて」
そう言うと、タカヤはわたしの手を引いて部屋から連れ出した。
そして向かった先は、わたし一人では買い物になんて来る機会がないような高級ブランドショップだった。
慣れた様子でスタッフと言葉を交し、わたしを手招きすると、タカヤは奥へと消えていった。
困惑しているわたしに、スタッフの綺麗な女性が「すぐにご用意致します」と声を掛けて服を選び出した。
マネキンのように3着のワンピースを着せられ、それに合う靴とバッグ、アクセサリーが並べられる。
「どれもお似合いでしたけど、いかがいたしましょうか?」
「えっと……」
高価すぎて自分では選べない。
どうしようと困っていると、奥からシルクサテンのスーツに着替えたタカヤが出てきた。
「決まった?」
「……まだ」
スタイルがいいから何着ても似合うんだと、思わず見惚れてしまう。