ラブレターを君に
ようやく辿り着いた。



向うの方に、家の電気が明るく付いているのが見えた。



あの家に………理音が居る…はず。


逸る気持ちを押さえて、一歩づつ、カズはその家に近付いて行く…



玄関の前で……カズは、もう、言葉を無くしていた。


顔を見たら何て言おうか………



躊躇しながら、ドアを叩いた。


暫くして…もう一度「トントン…………」


応答が無い…部屋は、あんなに明るいのに……誰も居ないのか?……



ドアノブを回すと


あっ!何て物騒な空いているでは、ないか……



恐る恐る中に入ってみた。



此処に理音は、住んで居るのだろうか。


広い窓が……そしてそこからは……夜空が見えた。



そこから視線を降ろすと、たてビアノが置いてあった。



思わず近付いて見た。



理音の家で見たものと良く似たファイルが、そこにも、あった。



もしかして………


やはりカズが思った通り…楽譜が綴られていた。



理音は、これを毎日のように見ながら、ピアノを弾いて居たのだろうか?



理音は……どうやって、この長い月日を過ごしてきたんだろう。



ピアノに向かい……そのファイルの最終ページを広げた。しかもそのページには、いつも広げていたのが、一目でわかる程の折りジワが着いていた。



理音は、きっと………この近くに居る…と、カズは思った。
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