ラブレターを君に
理音は、その頃の事を思い返していた。



ある夜…いつものようにマンションの理音の部屋の中の望遠鏡から、外を眺めていた。


理音の唯一の楽しみは、天体望遠鏡を毎日見る事。その内の一台は、景色を眺める為だけの望遠鏡である。


たまたま、ある日その望遠鏡にマンションの前を通る男の人が見えた。


マンションの灯に照らされて、その前をゆっくりと歩く姿が度々見掛ける日があった。



あのひとは、何故一人何時も悩んでる様子で歩いて行くのだろうか?



たしか、あの先には、広い公園があり、夜中になると、以外と静かになる場所ではあった。



あの俯きかげんな…何か悩みをかかえてそうな、後ろ姿が、理音の脳裏に焼き付いてしまっていた。



何でこんなにも気にかかるのか判らないまま日は、どんどん過ぎていった。
その人は、大体いつも月曜日に通り掛かると分かった。何故って、月曜日は、一段とその場所がひとけが無いせいではないかと思った。



人は、何を悩み打ちひしがれて、あんな風になるのだろうか?



理音は、家の中での自分にもうっ、あきあきしていた。自分の事など何も知らない人とごく普通に話してみたかった。



そして、自分にでも、誰かを助けることが出来るであろうか。この私に?この…親の言う通りにしか生きれない私に、誰かを助けるなんてことが出来るであろうか?



そんな、有り得もしないことを考えているうちに、どうしても、その人と話しをしてみたくなった。



それが…あのカズさんとの、初めて巡り逢った日のことになる。



カズとの、一字一句を思い出していた。



今となっては、忘れることなど、到底無理であった。


結局私には、何も出来なかった!ただカズさんを、なお一層苦しめただけ?
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