今治
道中、慎平は「どうせ締まっとるよ?」と言ったが、「シスター」を歌いながら京子は、「いいのいいの」と言って聞かない。ちなみに、「シスター」もポルノグラフィティである。
市民の森からは、西中までは、すぐのところにある。歩いて地下道を使えば、もっと近い。
「シスター」を聴き終わる前には、西中の校門の前に着き、その近くにあったスペースに水色のタントを停めた。
「私も久しぶりに来るわ」
そう言って、慎平が降りるよりも先に京子は、車から降りて、校門の方へ歩いていく。
慎平も、置いて行かれないように急いでシートベルトを外し、車から降りた。スマートキーで、京子と車の距離が離れることによって、カギが自動で締まってしまうのだ。
慎平が降りてすぐ、前照灯がピカッと光った。カギが締まった。
「やっぱり締まってるね……」
学校の方のカギも、案の定、締まっている。
「ねえ、侵入する?」
そう言って、学校の校門に手をかけた京子を慎平は、本気で止めた。捕まって、卒業生ですと言っても、警察には通用しない。
ふと、京子の動きが止まる。慎平には、その理由がわかった。
慎平に今、母校の校門前で両手を回されているこの女性、名前を松山 京子という。
慎平の中学の同級生であり、慎平の初恋の人である。