今治
「さあて、次はどこに行きますか?」
やっと笑い終わり、京子は、タントのエンジンをかけ、ウォークマンをいじり、「ベアーズ」を流した。言うまでもなく、ポルノグラフィティである。
「京子は、行きたいとこないん?」
せっかく、笑い終わったのに、今度は、「京子」というワードでも、当の本人は笑い出し、これでは、慎平としては、自分の肩を叩きながら笑うこの女性を何と呼べばいいのか、わからない。お手上げである。
「えっと……うんと……ふふぅ~」
落ち着いて、京子は、「じゃあ、延喜グラウンド行こ?」と言い出した。
意外である。京子が延喜グラウンドに行きたいと言い出すのは。
延喜グラウンドとは、サッカー部が夏休みや冬休み、春休みに練習をする場所で、山の上の方にある。小さいながら公園もあり、野球もできる。慎平自身も、春休み、広島に引っ越す前の間、延喜グラウンドでソフトボールをして遊んだ以来、行くことになる。
「いいけど、あそこ行って何するん?」
すると、ハンドルを切りながら京子は、「サッカーでもする?」と言った。
「ボールは?」
「買おうよ。ダイソーなら置いてそうじゃない?」
水色のタントは、国道196号線____それにしても、よく通る道である。