今治
No.6
延喜グラウンドでは、慎平にとって、この時期だから思い出すことが一つある。
確か、中学1年の時で、その日は、12月25日。クリスマスイブの翌日で、延喜グラウンドで練習があった。
みんなでパス回しやシュート練習なんかをしていた時、一人が「枕元になんか置いてあった?」と聞いた。
各々、「ないよ」とか「あったよ」とか、まあ、でも、大半が「ないよ」と答えていたように思う。
サンタクロースの存在を信じてなどいなかった慎平だが、それを両親の方から慎平に伝えるわけもない。それを利用して、慎平は、毎年、サンタクロースからのクリスマスプレゼントをお願いしていた。
そりゃ、慎平だって、小学生の頃は、本気でいると信じていた。しかし、当時同じクラスだった男の子から「サンタクロース」の正体を聞かされ、驚愕した。
家に帰って、母親に確かめてみると、「それは、その子の親がサンタさんに『自分で用意するからいいです』って言っとるんよ。でも、うちは貧乏やけん、サンタさんにお願いするんよ」と今聞いても、的を得ている言い訳をして、慎平の純粋な心を守ってくれた。
そして、中学1年生になっても、慎平は、「ギター」を「サンタクロース」にお願いし、それがちゃんと枕元にあったのだが、さすがに、恥ずかしくなって、「なかったよ」とみんなに嘘をついた。
そして、次の年から、「サンタクロース」側からなのか、慎平が断ったからなのか、忘れたが、枕元には、何もなかった。