今治
「慎平、今日何の日か知っとる?」
「今日? 天皇誕生日やろ?」
「違うって。日付変わったから、天皇誕生日は昨日。今日のこと」
「ああ、クリスマスイブやっけ」
もちろん、慎平は、それを知っていた。そして、多分、京子もそれを知っていたんじゃないかと思う。
「なんか、クリスマスイブのイブってなんか変だよね」
「確かにな。クリスマスの日の夜みたいな感じ」
上手く説明できなかった慎平だが、25日の深夜、つまり26日に変わったばかりの夜のことを言っているらしい。
「慎平は、将来、何になるん?」
慎平は、京子の質問に、何も答えられなかった。慎平には、今、やりたいことがないわけじゃないが、それを他の人に言うのが、何となく恥ずかしかったのだ。
「京子は?」
慎平は、質問を返したが、京子もそれについては、「わかんない」と返した。
そして、どちらからともなく、水色のタントの方へ歩いていき、座席に座った。