今治
慎平は、スムーズに車のエンジンをかけ、ちょうど流れてきたBGMは、「Hard Days,Holy Night」だった。ポルノグラフィティである。
「この歌って、そういえば、クリスマスの歌よね」
京子が言うように、社会人が残業に忙しく、彼女とのクリスマスに過ごせないという内容の曲だった。
「でも、私からすると、大事な人がおるだけで、贅沢やと思うんよね」
その京子の言葉に、慎平は、ドキッとした。これは、京子には今、彼氏がいないということなのか、それとも客観的に見て、そう思っただけなのか、どうだろうか、わからない。でも、知りたい。でも、聞けない。
「まあでも、そうやね」
慎平は、言葉を濁した。この言葉に京子が自分と同じようなことを考えるか、それはわからないが、是非そうであってほしいと慎平は、半分残った缶コーヒーを飲みながら願った。
「そういえば、慎平から告白されたことあったよね」
京子の言葉に、慎平の口に入ったコーヒーが器官に流れていく。そして、咳込む。
「大丈夫!?」と言って、京子がウエットティッシュで拭いてくれるが、慎平は、「自分でするから」と京子の持っているウエットティッシュを取った。若干、手が触れた。