今治
松山市駅までは、今いる波方町から196を使えば、1時間ほどで着くとカーナビは、表示している。
「途中代わろうか?」と京子は、言ったが、慎平は「寝とっていいよ」と言った。それなら京子も「なら、そうする」と慎平の肩に頭を乗せてきて、カーナビの到着予定時刻が、どんどん早くなる。
そういえば、松山と関係ないが、慎平は、中学卒業旅行と称して、男3人で宇和島にという計画を立てていた。
というのも、慎平と同じクラスの坂本 正志(さかもと まさし)が、宇和島に住んでいたことがあり、その話が盛り上がって、一緒に宇和島に行こうということになった。
ちょうどその時、英語の授業で、「スタンドバイミー」を観ることになり、それを見た、これまた同じクラスの高岡 修也(たかおか しゅうや)が「旅がしたい」と言い出し、それなら一緒に宇和島に行こうということになり、卒業旅行が決まったのだ。
ただ、出発前になり、お金の計算をしていると、宇和島までかなりお金を使ってしまうということになり、それなら、近場でお金を使うほうがいいと考え、結局行き先は、松前町にある、エミフルという大型のショッピングモールになった。松前町は、今から慎平と京子が向かう、松山の少し先にある。
そして、そこで慎平は、初めて電車に乗る。
初めてきた今治駅、初めて自分たちで電車に乗る。もちろん、切符の買い方もわからず、やっとのことで買えたが、改札に通し、切符を取り忘れ、駅員に迷惑をかけながら、やっとのことで電車に座れた。
早起きで、しかし、3人とも興奮しており、「誰かに電話して、起こそう」ということになり、クラスの何人かに電車の中で電話して、起こした記憶が慎平にもある。
ただ、買った切符のとおり、「北伊予駅」に着いたのだが、エミフルまでは、ものすごく歩かないといけないことに気付き、それでも「スタンドバイミー」を見ていたこともあり、3人とも苦に思わず歩いた。
途中、「クラスの女子をランク付けしよう」と高岡が提案し、あれやこれやと出していき、結局、誰が1位だったのか忘れたが、トップ3の中に、慎平の肩に頭を乗せている京子もいた。