今治





そして、結局、2時間ほど歩いて、やっとエミフルに着き、まだ開店準備をしている店が多い中、3人ともフードコートの席に座り、何を食べるか相談していた。




結局、そこで700円くらいのラーメンを食べ、店内をうろうろし、14:00頃には、エミフルを出発した。




ここから、どう帰ろうか、悩んだ結果、松山市駅の近くにある大観覧車、「くるりん」に乗ろうということになり、エミフルから松山市駅まで歩くことにした。




今となっては、これが間違っていて、3時間歩いても着かない。途中、電車が走っている線路を見つけ、「スタンドバイミー」のように、線路を歩こうと歩いたりなんかした。東京にきて、今考えると、線路の上に乗るなんて、とんでもない。しかし、その頃は、やっていいことと悪いことの区別が、曖昧になっていたんだと思う。




そして、4時間ほど歩いて、松山市駅に着き、「くるりん」から街の景色を一望して、声をあげてはしゃいだ。慎平にとって、忘れられない大冒険であった。




しかし、今、そんな思い出のある道を同級生の女の子と車で走っている。あの大冒険を超える、大冒険を今、まさにしていると思うと、胸が高鳴った。




慎平は、BGMをバラード系の「ワン・ウーマン・ショー ~甘い幻~」から、ノリノリ系の「ネオメロドラマティック」に変えた。




そこで、京子が気づき、頭を起こした。寝ていたのか、いなかったのか慎平はわからなかったが、京子の頭の中では、天気のいい空にシャボン玉が漂っていたのに、急にそのシャボン玉がパチンパチンと割れはじめ、さっきまで住んでいた空が枕になり、稲妻が光っているようなそんな景色になったはずだ。




慎平は、「起こしちゃった?」と聞いたが、京子は、「大丈夫」といい、コーヒーを一口飲み、「ネオメロドラマティック」を口ずさみ、サビのところで、慎平の肩にパンチをするというよくわからないことをしている。





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