今治
エピローグ





松山市駅に設定したカーナビは、くるりんが見えてきたところで、「案内を終了します」と流れ、それからすぐに車内は、「横浜リリー」に戻った。




くるりんは、もうすでにライトアップはされていなかった。時刻も3:30を過ぎていて、今から観光するにも、ホテルに泊まるにも中途半端な時間である。




「あれ、観覧車! 乗る?」




「いやいや、もう乗れんやろ」




「なーんだ」とがっかりした京子を見て、慎平は、彼女は本気でこの時間から観覧車に乗れると思っていたのだろうかと呆れた。




それに、松山に着いたのはいいが、慎平にとって、この場所は、卒業旅行でくるりんに乗ったことと、広島の祖父母の実家に帰る時に、寄った駅ということしかない。慎平の本当のゆかりの地は、今いる松山市駅から少し行った、久米町だ。




「どう? 懐かしい?」




しかし、そんなことを今更言うと、京子に悪いと思った慎平は、「懐かしい」とだけ言った。懐かしいのは、嘘じゃない。しかし、ここらへんで美味しいラーメンの店なんていうのは、知らない。




「降りて歩く?」




そう京子が言ったが、街を歩いても、しょうがないと思った慎平は、「いやいや、もう十分よ。それより、次どうする?」と提案した。




そして、その提案をしたところで、慎平は、聞き忘れていたことがあったのを思い出した。




それは、なぜ、慎平が今、こうして中学の同級生とドライブして、ライトアップの終わった大観覧車を見ているかということにも繋がる、純粋疑問だ。




「なんで、俺と会おうなんて連絡したん?」





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