今治





結局、結ばれる可能性のあった二人が、それぞれ自分の意見を言えず、それをこうして小説の話のように再開して、それでお互いがお互いを好きだったと知る。




勇気とか、メンタルとか、そういうのは、簡単に出せとか、強くしろとか言えるけど、それを青春真っ只中の男女に言うのは、あまりにも酷なんだろうなと思う。




「それで、いつまでこっちにおるん?」




そう俺に聞いて、彼女は、車のエンジンをかけ、「約束の朝」をかけた。ポルノグラフィティである。




「まだ決めとらん」




ブラックブラックを噛んで、俺は言った。そういえば、あの小説のキスの前にブラックブラックを噛めばよかったと、書き終わった後で気づいた。




「じゃあさ、あの小説の続き、作りに行く?」




「は?」




「ほら、あの後、どこに行くか決めてなかったやろ?」




「確かに、そうやけど、今日、もう24日で? ほんまに予定ないん?」




「あー、あれは、本当。彼氏おらんのもね」




「まじか。まあ、俺もやけど」




「まじ? じゃあ、本当にキスしちゃう?」




「ばーか。中学の同級生と久々に会って、キスするのって気持ち悪いやん?」




「それもそうやね。やめとこ」





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