エリート医師に結婚しろと迫られてます
春に想う
ー麻結?鍵を渡したのは、何のため?
森谷さんが電話をかけてきた。
やっと来た。
顔がにやついて止まらない。
耳当ててダイレクトに聞くと迫力がある。
優しい甘い声は…体に染み渡る。
「ごめんなさい…私からかけようと思ったんだけど、森谷さん忙しいと思って…」
これは、真実半分。
一度電話したら何度もかけたくなって、そのうち止まらなくなってストーカーのように何度も連絡してしまうかもしれない。
ー遠慮したんだね。
お兄さんのことで、君は僕の置かれた状態がわかってるから。
でも…君の声聞きたい。
留守電でもいいから入れといて
「ん…そうする」
本当は、留守番電話なんて御免だ。
森谷さんの声で録音してもらうのは大賛成だけど。
ーそれでね、今日は早く帰れそうなんだ。だから僕の家で待っててくれる?
「はい。森谷さん、夕食は?」
ー僕の分は気にしなくていいよ。自分で用意する。だから必要なのは、君だけでいい…
「わかった。それで、あの…森谷さん?周りに人いないんですか?」
結構、周りから雑音が聞こえてきますけど。
―いるよ。たくさん。けど、誰が聞いてようと、そんなこと僕には関係ないけどな。
「ええっ…」
この人は、よくそういうこと平気でおっしゃる。
―じゃあ、楽しみにしてるよ。