エリート医師に結婚しろと迫られてます
森谷さんの笑う声が、聞こえてる。
顔を見たいな。どんな風に笑ってるのか。
―ごめん…からかうつもりはなかった。もっと、君の声が聞きたかっただけ。麻結?今、どこにいるの?
「えっとね。多分、近くに居るよ。森谷さんの病院の近く。ほら、振り返れば病院の入り口が見えると思う」
―本当なの? そんなに本当に近くににいるの?
「うん…今、駅に向かって歩いてるとこ。もうすぐ駅に着くよ」
三原さんは、自分が勤める病院のすぐ近くに呼び出して、用事が済んで満足するとさっさとタクシーに乗って帰っていってしまった。
―麻結…ちょっと待って、帰るなよ。会いたい。だから…帰るなんて言わないで…駅に行くのは待って。そのまま引き返して、病院まで来て。それから…一緒に帰ろう。
「ええっ、仕事は終わったんだ?帰れるの?」
弁護士もそうだけど、医者の兄を見ていれば、森谷さんの忙しさも分かる。だから、近くに来たからって、電話で呼び出したりしない。
―終わったとは言えないけど、もう限界。今日はこれで終わりにする。待ってて…入り口が見えるんだよね。だったら、こっち向かって歩いて来て。僕もそっちへ行く。
「うん…」