エリート医師に結婚しろと迫られてます
少しの沈黙の後、彼が口を開いた。
「あの頃、今くらい話が出来てたら、断ったりしなかった?」
「そうね。それはあるかも。
話もなにも、好きだって抱きしめておいて、別の女の子が来たら、その子の後を追いかけて行っちゃったんだもの。そんな人どうやって信用するのよ。
私だって、そのことさえなければ、OKしたと思うな」
「もしかして、断られた理由ってそれだけ?」
「そうよ。だって、あなた真理絵にくっついてばかりいたから、彼女が好きなんだと思ってた。そんなの、普通、断るに決まってるじゃない」
「ああ、麻結…そんなこと考えもしなかった」
彼は、しまったというように、両手で顔を覆った。
「それは、森谷少年は考えが足りなかったわね。真理絵のために、好きになった男の子に、私がどれだけ幻滅させられた思ってるのよ」
森谷さんが、私を抱きしめた。
「ああ、麻結、ごめん。そのことは僕にも責任があるんだ。でも、あきれたりしないで…」
「何の話よ」
「内緒」