エリート医師に結婚しろと迫られてます
「えっと…話が見えないんですけど…」悪いけど、全然。
「分からない?君は、親しい男が出来ると真理ちゃんに相談するだろう?
そうすると、真理ちゃんは、そいつに向かって勘違いするように、笑いかけるんだ。
その虫は、自分が真理ちゃんに興味を持たれてると勘違いされて、真理ちゃんに吸い寄せられるように近寄って行くわけ。
そうやって引っ掛かった虫を見て、君は幻滅してさようならってわけ」
「ひどい…そんなことして、悪いと思わなかったの?」
「別に…君のこと真剣に考えてるなら真理ちゃんが笑いかけて来ても、無視すればいいだろ?」
森谷さんは、少しも悪びれずに言う。
「そうだけど…私の薔薇色の高校生活を返してよ」
「薔薇色の高校生?そこまで心配しなくても、大して…マトモな奴はいなかったと思うよ。真理ちゃんの話だと」
「何よ、それ…」
「あんなゲジゲジ虫みたいなカスなら、付き合わないほうがましだ。
言っとくけど、僕がずっと真理ちゃんに頼んでたわけじゃないよ。
君のお兄さんと真理ちゃんが自主的に虫退治してただけで、僕は何も頼んでない」
「お兄ちゃんまでが?」
「知らない?あの人、相当のシスコンだよ。君のボーイフレンドにどれだけ威嚇したり、自信喪失させてきたか知らないの?」
「まったく」
「おめでたいよね。君って、本当に。
でも、大学の時は、うまく行かなかった。
君はお兄さんや僕と同じ医学部に来ると思ったのに、違う大学に行ってしまったし。
真理ちゃんも、君の近くに、ずっといられるわけじゃなかったから…」
「ちょっと待って。潤也の時も何かしたの?」
「いいや、僕は何もしてないよ。
ただ…浅倉さんが、麻結と付き合うのは医者じゃなきゃ許さないって言ってたと思う…」
「どうして、医者じゃなきゃいけないのよ。何でそんなこと言うのよ」
「自分が、跡を継げないかも知れないから…」
「勝手過ぎる…みんな」