エリート医師に結婚しろと迫られてます

森谷さんは、悪魔のような微笑を私に向ける。

「みんなよかれと思うが故にだよ。多少歪んでいてもね」


「ねえ、森谷さん、そんなに私のこと好きなら、どうして堂々と付き合って下さいって直接来なかったの?」


「直接?どうして…僕は君にこっぴどく、振られてるんだぞ。どうしてそんなことするんだよ」


「それじゃあ、あなたは、いったい、今まで何をしてたの?」


「普通の男として、人生を謳歌してたさ。好きになった人と付き合って、別れて、仕事に打ち込んで、それの繰り返し」


「自分だけ、薔薇色の人生だったのね?
なら、ずっとそうしていればよかったじゃない?
私なんかに最後まで関わらずに」


「そうだな。そう言えば…どうしてかな。

結婚は別だと思ったからかな。
どんなにきれいな女性でも。

自分にとって有利な結婚だと思えても、あの…浅倉さんの妹には、かなわないなと思ってた。

でも…わざわざ自分から、会いに行くほど気持ちが傾いていたわけじゃなかった…」


「パッとしない容姿ですものね。それが、どうして会いにくる気になったの?」


「浅倉さんが本気で、君を大学の後輩と結婚させようとし始めたから…相沢って覚えてる?」


「もちろん」


「あの日、僕とひさしぶりに再会した日、君に会うはずだったのは、相沢だった。僕は相沢から、浅倉さんに頼んで横取りした」


「そうなの…」


「浅倉さん自分が内科だから、外科の方がいいだろうって理由でね」
< 319 / 336 >

この作品をシェア

pagetop