エリート医師に結婚しろと迫られてます
森谷さんは、今まで兄が私に会わせようとした人とは、まるで違っていた。
兄が、うちの両親に言われたのか、大学の後輩を私に引き合わせていた。
今まで連れてきた人は、母に言われて無理に連れてきてたって感じだった。
兄が病院の後継ぎとして相応しい人間として、連れて来てるようには見えなかった。
それまでは多分、兄はどこかで、まだ、自分が病院を継ごうという気持ちがあったのだと思う。
でも、兄が、森谷さんのような人を連れて来たとすれば、今までと少し違うかも知れない。
父の後を継ぐつもりなら、本気で頼めるような後輩を連れて来ないだろうから。
病院を継ぐことを、止めたからなのだろう。
海外に出ていこうと、気持ちが固まった証拠のかもしれない。
私は、少し複雑な思いで兄を見ていた。
が、それとこれとは、別だ。
残念ながら、小学5年の夏に私は、酒屋の嫁になると決めてるし、
兄が己の野望を成し遂げるために、幼い頃からの夢をあきらめるわけには行かないのだ。
森谷さんも、私とくっつけようなんて兄の企みを知ったら、
一目散に逃げ出すんじゃないかな?