エリート医師に結婚しろと迫られてます
私たちは、店を出て歩きだした。
何も考えず、ひたすら駅に向かう事だけ考える。
ところが、森谷さんは、
「ちょっと待って……」
と私の行く手を阻むように、立ち止まった。
にこやかに笑顔を私に向けて。
「まだ、時間大丈夫ですよね?」
この人は、使う言葉も、振る舞いも自然で柔らかい。
優しい顔してるし。
言葉も柔らかいし。
人当たりもいい。優秀な内科医だもの。
患者さんの相手をするのは、お手のもの。
人の話を聞くのも、思った方に誘導するのも得意だろう。
決して、帰るなとは言わない。
脅すわけでもない。
「はい」としか言えない雰囲気。
「なにしろ、僕は麻結子さんと全然、話してませんから」
全然のところを強調して言った。
それって、帰るなってことですか?
そう、爽やかに微笑まれた。
そんなことされると、本当に帰りにくいな。
「はあ…」