エリート医師に結婚しろと迫られてます
家には、ただでさえ、母、父、兄…
家には3人の医者がいる。
ホームドクター 3 対 患者 1という恐ろしい構図だ。
「これで、やっと抜け出した実家に、
兄の代わりに連れ戻されて、
患者1に対して、食事の時間ずっと
3人の医者のカンファレンスが始まるのよ!」
「僕は、楽しいと思うけど」
彼は、賢明にも笑いをこらえようと、軽く握った手を口元に当てる。
嫌いだ。自分は損なくじなんか絶対引かないと信じてるタイプ。
「もおおお!どうして?家では、地獄の閻魔様より、細菌やウィルスのほうが恐ろしいと教えられるのよ。
楽しい食事の時間が台無しよ」
「まあ、確かに。閻魔様は腹痛なんか起こさないからね」
森谷さんは、面白そうに笑ってる。
「まだあるわ!食事の前に、
手を洗ったのか確認されるのは、いつも私。
医師免許持ってるだけで、
過ちを犯さないって自信にあふれた態度は、どうかと思うけど」
わかった、わかったと彼は、手のひらを私の方に向ける。
「君だけを悪者にしないように、気をつけるよ」
「毎日、食事しながら、
ドクターの問診受けるだなんて、
愚かなマネ、私がすると思う?
想像しただけで、ゾッとする」
「なるほど。
それは、お気の毒に。
でも、君は家族のみんなに大切にされてたんだね。
もちろん、僕にとって大事な人なんだよね。
あの、浅倉さんの妹だし。
古くから続く病院の娘だし。
だから、君は僕の理想。
君の持ってるもの、
みんな結婚相手としては、完璧だし。
君の家族の一員になるには、君が必要なんだ。すべて手に入れたい」
わたしの中身以外は…ってわけね。
まあ、それで、少し冴えない女と
思っても、目をつむるわけね。
でも、そうはいかないのよ。