ウソつき彼氏とニセ恋愛




「……」



何も反応してくれないよ〜っ!

反応してくれなきゃ、
どうしたらいいか分からなくて、
もうどうしよう!



「えと…水瀬く…じゃなかった、昴くん?」



もう一度、名前を呼んでみる。
今度は目の前で手を振りながら。



すると、昴くんはハッとして、
照れくさそうに笑った。



「なんかさぁ……」



「…?」



「千夏ちゃんに呼ばれると、心地いいかも!」



呼ばれて、心地いいなんて…
初めて言われたよ。

まず、下の名前で呼ぶことが少ないのに…。



「これからも、ずーっと!
下の名前で呼ぶんだよー?」



「う、うん」



“これからも、ずっと”

その言葉に、なんだか胸が痛くなる。



だって、偽りの昴くんからの言葉だから、
心が痛いし、寂しい。




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