ウソつき彼氏とニセ恋愛




「千夏ちゃん」



「なぁに?」



昴くんは、前を見ながら話しかけてきた。

横顔が、なんだか嬉しそう。



「俺、幸せ」



「…私も、幸せ」



「俺ね、絶対幸せになれないって思ってた」



「昴くん…?」



悲しそうな表情でも、嬉しそうな表情でもなくて
なんだろう、この新しい表情。



「母さんには捨てられるし、
父さんとも微妙だったし、
彼女にでさえ裏切られてさ、

なんも楽しくないし、辛いし、寂しいしで
どうにかなっちゃいそうだったけど…」



そう言って、
私の方を振り向いた昴くん。



あ、分かったかも、さっきの表情。




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