ウソつき彼氏とニセ恋愛
「この券を渡したときもね、
最初はムスッたしてたのに、突然柔らかい表情をしたから驚いたんだ。
……君を誘おうと考えてたんだと思うよ」
そんな言葉を聞いて、
なんだか嬉しくなって、泣きそうになって。
「……父の私から言うのも変だが、
昴を頼みたい。
君ならきっと、笑顔にできる。
私にはできないことが、
君なら出来るから……」
そう言って真人さんは、
トイレの方を確認してクスッと笑ってから、
「それじゃあ、また」
そう言って、再び仕事に戻った。
──その数秒後。
「千夏ちゃん!」
「わわっ!」
昴くんが戻ってきてすぐ、じーっと私を見つめた。
……だから真人さん、仕事に戻ったのか。