鈍感さんに恋をした。
そう言い残して、男は立ち尽くしている莉愛を連れて、去って行った。
「…湯河原、くん?」
俺の後ろにいた実行委員の女が不思議そうに俺を呼んだ。
俺は、パッと駆け出した。
「え、湯河原くん!?」
女のびっくりしたような声が、どんどん小さくなっていった。
「はあ、はあ...」
息切れ切れで向かった先は、2年4組。
無性に、夏見に会いたくなった。
チラッと教室を覗くと、夏見の姿が見当たらない。
「あれ、湯河原くん。
夏見さんなら、もう帰ったよ」
教室の中にいた女が、教えてくれた。
俺はまた走って、2年4組を後にした。
会いたい、夏見に会いたい。
俺は、携帯を取り出した。