鈍感さんに恋をした。
楓が独り言のようにブツブツと呟いた。
その時、上靴に履き替え立ち去ろうとする湯河原センパイと、下駄箱でまだ友達と喋っている夏見センパイの目が合った。
「「え…」」
2人して驚愕したような声を出すと、夏見センパイが先にパッと視線を逸らした。
しかし、なんと湯河原センパイの方は、表情を変える訳でもなく、動揺する訳でもなく、ただ颯爽と去って行った。
夏見センパイが傷付いたような表情をして俯いた。
「私…… ちゃんと好きだって思われてるのかな」
落胆したような声で言う夏見センパイを見て、一緒にいた友達もちょっと困ったような顔をしていた。
「……莉愛、行こう」
突然、麻琴に手をグイッと引かれた。