鈍感さんに恋をした。
父さんには平気なフリしてるけど、やっぱりちょっと、寂しくて。
そんな俺に、優しく手を差し伸べてくれたのが、夏見だった。
唯一、俺の事を“たっちゃん”と呼ぶ。
『ねぇ、たっちゃん。今どこいるの?』
「裏庭にいる」
『じゃあ、今から行ってもいい?』
「別にいいけど...」
『じゃあ、すぐ行く!
待ってて!!』
「えっ、あっ………」
俺の有無を問わずに、一方的に電話は切られた。
「たっちゃん!」
3分ぐらいした頃、夏見が校舎の影から姿を現した。
「お待たせ~」
夏見は手を振りながら、駆け足で俺の所まで来ると、ベンチに腰掛けた。
「たっちゃんと会うのって、久し振りだよね~!」
「…ああ」