伝えたい。あなたに。
昼過ぎ。



プレールームを覗く。



まだ子供達はいない。



小児科の先生や看護師が飾り付けをしている。



気づいた人が近づいてくる。


『こんにちは。小児科の河本です。山瀬先生から話は聞いてますよ。今日はよろしくおねがいします。』


『よろしくおねがいします。』



丁寧に頭を下げる。



山瀬先生から悪い噂は流されていないようで。



『もし、具合が悪くなったりしたら、些細なことでも遠慮なく言ってね。』


山瀬先生と姿が重なる。


『はい。わかりました。』



『本当に無理しないでね。がまんしなくていいから。』



少ししつこい気がする。



苦笑いを悟ったのか、



『ゆうかちゃんよく我慢するって聞くから、心配でね。』



あ、




やっぱり。




山瀬先生だ。



余計なこと言ったんだ。



せめて小児科の先生の前では、お姉さんでいたかったのに。



『山瀬先生にはお世話になってるんだ。昔から。』



そういうことか。



油断も隙もない。



『そうですか。今日は大丈夫です。本当に。』



『はい。じゃあ自由にして下さい。』



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