伝えたい。あなたに。
それから1ヶ月がたった。



病院は今年も正月を越そうとしていて。



目の前には私の家族がいる。



アメリカのお土産をたくさん持って。



『ゆうか、お母さんたちから話があるの。』



『なーに?』



『結婚して欲しい人がいるの。』



『結婚!?まだ高校生だよ。』



『今すぐではないけれど、いずれね。』



そんな勝手な話があるだろうか。



『誰なの?』



『あなたの主治医の山瀬先生よ。』



どうして。



山瀬先生と政略結婚を。



山瀬家と高島家に何のつながりが。



『あのね、実はあなたにはずっと黙ってたんだけど、ゆうかにはお姉ちゃんがいるはずだったのよ。お母さん真紀が生まれて間もない頃、ついウトウトしてしまって、その間に真紀は少し空いていた窓の隙間から....お.....ち....てっ..死んでしまったの。そしてあなたが生まれてからも、お母さん自分のこと責めて、責めて。

あなたにはそう思いをさせたくないと、育児を人任せにして、働いてたの。真紀を失った悲しみから逃げていたのかもしれないわ。その時、ゆうかがよく体調を、崩すようになって、山瀬先生のお父さんにあたる真一さんにお世話になってたの。よくあなたのこと気にかけてくれてね。結局ゆうかにも辛い思いさせてしまって、ごめんね。本当にごめんね。』


『お母さん....』



お母さんの泣き顔は初めて見た。



子供が病気になっても涙も流さない冷徹な人だと思っていたから。



ただぼーっと聴いている。



『最近山瀬先生のお父さんが亡くなったんだ。』



声を震わせる母を見て父が口を開く。



『そうだったんだ。お姉ちゃんがいたなんて、知らなかった。』



山瀬先生のお父さんのことはあまり知らない。



姉がいたことももちろん実感がないから、悲しみもいまいち湧かない。



『でもどうして結婚の話になるの?
関係ないじゃない。』



『結婚したいと言ったのは、泰志先生なんだ。』



『山瀬先生が?どうして?』



『山瀬先生は過去のことを全て知ってる。その上で次は自分がゆうかと私達家族の力になりたいと。山瀬先生とどんな関わり方をしているのかは分からないけれど、ゆうかのこともよく知っていて、いつもそばに居てくれる彼ならと思ったんだ。』



私が知らないところで色々なことが起きていた。



のうのうと自分のことだけを考えてきたことが、恥ずかしくなる。



『私何も知らなくてごめんなさい。お父さんお母さん。』



『いいのよ、言わなかったんだから。』



目を真っ赤にして言う。
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